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真白くんが、入院することになった。


倒れたわけではないものの、症状が安定しないのだという。学校も休みがちで、息をするのも苦しそうな様子を見ていると、入院して体調管理した方がいいのかもしれないと思っていたからそこまで取り乱すことはなかった。


でも、学校に真白くんがいないのは寂しい。柳くんもそれは同じようで、少し元気がないように見える。見かねたお母さんにお見舞いにでも行ってくればいいじゃないのと言われた私は、真白くんに連絡を取ってお見舞いに行くことになった。


一度来た、去年の夏祭りに真白くんが緊急搬送された病院の受付で手続きを済ませ、エレベーターを探す。確か、入院しているのは五階。何人かと五階で一緒に降りると、私は教えられていた病室を探した。


大部屋の廊下側、柱をこんこん、と二回ノック。はあい、と聞こえる声は真白くんのもの。カーテンをゆっくりと開けると、ぱっと笑顔になった真白くんの顔が目に飛び込んできた。


「都築さん! いらっしゃい!」

「お、お邪魔します……?」


病室でいらっしゃい、お邪魔しますの挨拶はどうなんだろうか。


思いながら、真白くんがいいならいいか、と考えてベッドサイドに座っていたお母さんに黙礼する。いらっしゃい、と言ってきたお母さんにそういうものなのか、と自分を納得させてから、持ってきたものを差し出した。


「えーなにー?」

「退屈してるかなあと思って、」

「……都築さん、なんかもっと他のものなかったのねえ」

「ノートのコピー持ってきたよ!」


隣でやり取りを聞いていたお母さんが吹き出す。苦い顔をして足元にノートのコピーを投げた真白くんに睨まれた。折角持ってきたのにひどいものである。気持ちはわかるけど。


「ごめんごめん、担任に頼まれて。本当のお見舞いはこっち」

「もー都築さんー! ってうわー読みたかったやつ!」

「この間読みたいって言ってたからさ。私持ってるやつだけど、時間ある時にでも読んでみてよ。食べ物だと、食事制限聞いてなかったしダメかなって思ってやめておいた」

「その選択は正しい。まあ、寧ろちょっと栄養足りないくらいだから別にいいらしいんだけど……そっちは母さんにでも頼めるし、これはマジで嬉しい」


ありがとう、と一転して笑顔になった真白くんに頷いて、残りの本も差し出した。