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白くんが死んだと聞いたのは、もうすっかり寒くなって雪を見ることも増えてきた一月のことだった。


少し前から体調を崩していたらしい。あっという間にいなくなってしまった白くんのことを懐かしそうに話す真白くんは、寂しそうではあったけれど悲しそうな表情は見えなかった。


夏に倒れて以来、特に大げさに体調を崩すことはないものの冬という季節は身体が弱い者にとっては往々にして脅威だ。真白くんは学校を休みがちになっていて、白くんだけではなくうちの猫も身体の弱かった秋生まれの子猫が何匹か亡くなった。


そして、春。温かくなるに連れて調子も戻ってきた真白くんから、私は真剣なお願いをされていた。




「子猫が欲しい?」

「うん。これからが時期だし、もしよかった俺に一匹引き取らせてほしいんだ」


親の許可は取ってあるから、と言った真白くんは、思い付きではなくずっと考えていたことだったようだ。白くんの代わり、というわけではないことも何となく分かっていた。ちゃんとご両親にも話を通しているのなら、私に断る理由はない。


四月。無事に二年生に進級した私たちは、クラスは変わらず一緒だった。柳くんも一緒だ。若葉と茉莉、絵里とは別れてしまったが、三人は三人で一緒である。一人だけ除け者にされた私は先生たちに抗議したい気持ちでいっぱいになりながらも、なんだかんだ真白くんのお陰でクラスに馴染んでいたのだった。


写真部にも後輩が入り、細々と活動を続けている。私と真白くん、柳くんは一応写真部としてコンテストには応募しているものの、その実態は猫の里親募集にあったりするのだが。その猫の写真で部員が入ったりするのだから問題はないはずだ。


「分かった。そしたら、子猫保護したら見に来る?」

「うん! まあ、都築さんがよかったらだけど」

「というか、ちゃんと会ってみないと分からないでしょ。保護したら連絡するから、子猫が落ち着いたらうちに一回おいでよ」


よければご両親も一緒に、と付け足すと、真白くんは満面の笑みを零した。


ところが、事態が急変したのはその翌週である。


月曜日、いつものように部活を終えて三人で一緒に駅へ向かう道を歩いていると、真白くんがぴたりと足を止めた。


「……真白くん?」

「おい真白、どうしたんだよ」

「黙って。声がする」


呼びかけると、珍しく鋭い口調でそういった真白くんに、私と柳くんは顔を見合わせた。声が聞こえる、ってなんの声だろうか。私には何も聞こえないし、柳くんもどうやらそうらしい。