拘束型心筋症。心臓の病気。いつ死んでもおかしくない病気。
それを真白くんが患っていて。治療法は特になくて、きっと予後だって悪くて。というか、治療法がないのに予後っていうのかどうかも分からないけれど。
聞くとは決めたけれど、動揺するのとそれとは別問題だと、今更ながらに感じた。
「ごめん、混乱させて」
「いや、真白くんが謝るのは違うでしょ。混乱してないって言えないのが申し訳ないけど、大丈夫、受け止めるから待ってて」
謝った真白くんにとりあえず訂正を入れて、自分の中の整理に戻る。と、ぶっと吹き出す声がして思わず顔を上げた。
何事。
「ちょっと冬馬ぁ! どうしてそこで笑うの! 都築さん頑張って整理してるのに!」
「いやわり、だって都築さんすげえなって思って、」
「へ?」
私の? どこが?
「普通こんなこと言われて必死で整理つけてる最中に訂正入れられねえだろ」
「あー……それは確かに。そういえば冬馬も無理だったね」
「悪かったなあんとき俺まだ中学生」
「そうでした」
急に和やかに話をし始めた二人に逆に私が動揺してしまった。今ってそういう場面だっけ。違った気がする。
都築さん、と穏やかな声で柳くんに呼びかけられた。はい、と呆けたような声で返事をした私に、笑みを含んだ声で柳くんがありがとな、と言ってくる。意味が分からなくてきょとんとしていると、真白くんが割って入ってきた。
「俺、今じゃこんなんだけど、流石に最初は信じたくなかったから結構家族に八つ当たりして、八つ当たりしたりなくて幼馴染だった冬馬にも全部ぶちまけたんだよね」
「全然何にも知らなかったのに唐突に言われて、ずっと一緒にいた幼馴染がもしかしたら今すぐにでも死ぬかもしれないって知って混乱しないやつがいるかよ」
「ごめんごめん。そしたら冬馬ってば、いきなりおれのこと殴り飛ばしてさあ」
殴り飛ばす!?
「俺は認めねえからな! って啖呵切って、暫く口きいてくれなかったよね。仲直りしてからもすぐの頃は俺のことめっちゃ責めてきた」
「悪かったってマジで! あの頃は俺だっていたいけな中学生だったんだよ! つか責めるに決まってんだろ何で心電図受けてなかったんだよ!」
「だからそれは俺が悪かったっていつも言ってるじゃんか! にしてもいたいけはない! 嘘吐いちゃダメなんだからね!」


