気まぐれな君は



「分かった。……ありがとう。ちょっと安心した。でも、都築さんなら聞いてくれるんじゃないかなって思ってた」

「おい真白」

「大丈夫だって冬馬。ね、都築さん」

「うん、気にしないで柳くん。プレッシャーとか心配してくれてるんだよね? ずっと決めてたことだから、大丈夫」


ならいいけど、と柳くんが口を閉じて、真白くんに視線を送る。頷いた真白くんが、あのね、と一言。黙って都築の言葉を待つと、案外あっさりと口を開いた真白くんが、哀しそうに笑った。


「拘束型心筋症。それが俺の病名」


こうそくがた、しんきんしょう?


聞き慣れない病名に、思わず眉を顰める。苦笑した真白くんが、とんとん、と自分の心臓を指さした。


「心臓の病気。拘束って名前の通り、なんていうかな、心臓が動きにくくなるんだって。俺に見つかったのが中二の時。主治医曰く、この年で見つかることって珍しいらしい。普通小学校で分かるらしくて、でなくても中学入学した後の健康診断で心電図あるだろうって言われた。俺その日たまたま休んでて、その後もサボって心電図検査受けてなかったんだ」


心電図検査、って、サボれるのかなんて。的外れなことを考えながら、じっと真白くんを見続けて。


「五年生存率、超低いんだって。治療法もなし、薬もなし。おまけに中学入学時に検査してないから、正確にいつから、って分かんないらしくて。心臓移植対象なんだけど、まあ日本で移植なんてほぼ可能性ゼロ。かといって、海外行くには金がない」


それ、って。


「つまり、俺はいつ死んでもおかしくないってこと」


あっけあらかんとそう言った真白くんに、酷く泣きたくなった。


「小児の拘束型心筋症は、小学生までに分かることが多いんだって。でも俺、元々身体弱かったお陰で、というかせいで、か。あんまり体育とかも積極的に参加してなかったし、外遊びもほとんどしなかったから、症状が出なかったんだ。新しい病気のせいだなんて思わなかったし、またかあ、くらいの感覚だったし。でも、きっと仕方ないんだよね」


俺だから、というその理由がなんなのかはよく分からないけれど、真白くんは哀しそうな笑顔を見せていた。


普段あんなに明るい真白くんが、こんな重たいものを背負っているなんて思わなかった。運動禁止なんて言っても、いつ死ぬか分からないほどだなんて思ってもいなかった。


「ごめん、ちょっと待って」


落ち着け、私。聞くって決めたんでしょう。