ずるいよ。こんなの。
震える足で母の寝室へと向かう。引き戸を開けると母が首を吊っていた。体液が滴り、異臭を放っている。僕は、母を下ろして床に横たわらせた。しばらく呆然と母を見ていたが、やがて膝をつき母の横に力なく座った。
「……こんなのないよ」
母は何も言わない。ただ死後に硬直した苦しげな顔をまるで銅像のように張り付けているだけだ。
「僕の夢はね、家族で幸せに過ごすことだったんだよ」
胸が苦しい。どす黒い感情が僕を満たしていくのを感じる。
「……それだけでよかったんだよ!」
怒りが、悔しさが、悲しさが溢れ出す。
「それだけでよかったのに……!どうして死んじゃうんだよ!愛していたなら……僕と、父さんと一緒に前を向いて欲しかった」
僕は母さんの愛情なんて覚えていない。思い出せない。もうずっと前の事なんだ。
「僕は…鈍感なんだよ、母さん。思っているだけじゃ伝わらないよ」
知らぬ間に流れていた涙を僕は拭わなかった。
僕はただ涙を垂れ流して、体液にまみれた母の醜い遺体を睨み付けた。何が強く生きろだ。母さんは自ら死んだじゃないか。
久しぶりによく見た母の顔は、僕が記憶していたよりも遥かに老いていた。
震える足で母の寝室へと向かう。引き戸を開けると母が首を吊っていた。体液が滴り、異臭を放っている。僕は、母を下ろして床に横たわらせた。しばらく呆然と母を見ていたが、やがて膝をつき母の横に力なく座った。
「……こんなのないよ」
母は何も言わない。ただ死後に硬直した苦しげな顔をまるで銅像のように張り付けているだけだ。
「僕の夢はね、家族で幸せに過ごすことだったんだよ」
胸が苦しい。どす黒い感情が僕を満たしていくのを感じる。
「……それだけでよかったんだよ!」
怒りが、悔しさが、悲しさが溢れ出す。
「それだけでよかったのに……!どうして死んじゃうんだよ!愛していたなら……僕と、父さんと一緒に前を向いて欲しかった」
僕は母さんの愛情なんて覚えていない。思い出せない。もうずっと前の事なんだ。
「僕は…鈍感なんだよ、母さん。思っているだけじゃ伝わらないよ」
知らぬ間に流れていた涙を僕は拭わなかった。
僕はただ涙を垂れ流して、体液にまみれた母の醜い遺体を睨み付けた。何が強く生きろだ。母さんは自ら死んだじゃないか。
久しぶりによく見た母の顔は、僕が記憶していたよりも遥かに老いていた。

