樹ちゃんへ
お母さんもう駄目みたい。お父さんがいなくなって、お水に手を出してからなんだか変なの。いつも悲しくて苦しくて。それが全部 樹ちゃんに向くことが悔しくて。本当に駄目な母親でした。ごめんなさい。
お母さんね、いつも部屋にいるときはうずくまって泣いていたの。その時に樹ちゃんの部屋からも泣き声がして、あぁ私なにしてるんだろうって。早く樹ちゃんの頭を撫でてあげなきゃって思うの。でもね、そのたびに足が鉛みたいに重くて、耳元で大人になりきれていない私が囁くの「ねえ、あなたは子供。子供に子供を慰めるなんて無理よ。子供が母親になるなんて無理よ」って。そう、私は子供だった。樹ちゃん、そのせいで大人の仮面をかぶってしまったよね。
樹ちゃんが家に居ない時に樹ちゃんの担任の先生から電話がかかってきたの。それでね、樹ちゃんが就職しようとしてることを知ったの。家がぐちゃぐちゃだからって理由だったんだってね。それを聞いて、お母さん涙が止まりませんでした。樹ちゃんにこんなに心配させて。樹ちゃんの未来を潰してしまったって。
お母さんが仕事で貯めたお金は実は半分は全て貯金してあります。樹ちゃんが高校を卒業できるくらいは。だから、どうか高校に行ってください。一人でも強く生きてください。
お母さんの事は親だと思わないでください。だって、こんなの親っていわない。憎んでくれて構わない。だって、樹ちゃんの心と体を傷つけたのは紛れもなく私だもの。
でも、最後に馬鹿みたいだと思うかも知れないけれど知らないおばさんの言うことだと思って書かせてね。

樹ちゃんは私とお父さんの愛する我が子です。

さようなら。ごめんなさい。本当にごめんなさい。