床の上で目を覚ました。どうやら包帯を巻いた後に眠ってしまったらしい。顔を洗 いに洗面台に向かう。鏡を覗き込むと酷い顔をしていた。隈が酷く、やつれている。冷たい水を思いきり顔に欠けると頭が冴えてきた。
寝室の扉に耳を寄せると、母はまだ眠っているようだった。
時計を確認すると朝の5時。僕は学校へ行く支度を始めた。簡単を朝食を用意する。母の分にはラップをかけてテーブルの上に置いておいた。
朝食を済ませたら、歯を磨き身なりを整える。鏡に映る自分の目を凝視して静かな声で言った。
「自分がこの世で一番不幸だなんて贅沢な事を考えるな。お前には母親も、父親もいる。何より」
その言葉は掠れていた。
「何より、生きているんだ」
チクリと胸が痛んだ。
顔を伏せて足元の鞄を掴み玄関に向かった。
「いってきます」
返事はない。僕は曇り空の下、うつむき加減に歩き始めた。