落下していく。
僕の体は風をきり、やがて周りの動きは全てスローモーションとなる。そのおかげで美しい朝焼けが見れた。あの夢の夕焼けによく似ていたけれど決定的に違うのは、あの朝焼けは夕焼けと言うには冷たすぎる。表面上だけ優しくとりつくろっているんだ。
もし、あの朝焼けが暖かく、表面も中身も優しい夕焼けだったのなら僕は踏みとどまれたのだろうか。半身の浮遊感に怯え、夕陽を全身に浴びて泣いたのだろうか。けれどそんな事はどうでもいいんだ。僕は遠いところへ行くのだから。
本当はこれが僕の本当の夢なんじゃないか?
自分の胸に問いかけると、こだまのように同じ言葉が無機質に返ってくるだけだった。きっと今の僕の心は空っぽなんだろう。
地面が近づく。僕は目を強く閉じた。
その時、不思議な事が起きた。世界が優しく、穏やかな桜色に染まったのだ。しかも、僕は桜色の地面に無傷足をつけている。不思議に思いながらも真っ直ぐに歩いてみた。
しばらく歩いて行くと、小さな少年がいつの間にか僕の隣を一緒に歩いていた。
「君は……君は誰?」
少年は僕の顔を見て可愛らしい笑みを浮かべた。
「僕はね、君だよ」
そうか。僕は不思議な走馬灯を見ているのだろう。これから思い出を巡るのか。
「ねぇ、君は将来の夢はあるの?」
「僕は、将来カッコいいパイロットになるんだ!」
少年はキラキラとした瞳で夢を語った。
「赤い飛行機に乗ってね、青い海の上を飛び回るんだよ!」
確かに、僕の幼い頃の夢はパイロットだった。あの頃は飛行機の模型を父と一緒によく作ったっけ。
「素敵な夢だね」
「うん!」
少年は子供らしい笑みを浮かべて、ふっと消えてしまった。
前を見ると、半歩先に小学校低学年程の僕がいた。また同じように隣を歩く。
「君の夢はなんだっけ?」
「僕の夢?僕の夢は警察官か消防士だよ!人の役人にたつ事をしたいんだ」
「そうなんだね。立派じゃないか」
僕がそう誉めると、少年は照れ臭そうに笑って消えていった。
周りを見渡すと、父と模型を組み立てる僕。母と一緒に洗濯物をたたむ僕。家族と一緒に夕食を食べる僕。どれも幸せそうな顔だ。僕は、そんな思い出をたちの真ん中を一人で孤独に進んだ。やがて、桜色がどこか寂しい紺碧に変わった時だった。幸せな思い出たちが消え去ったのだ。変わりに、目の前にうずくまる一人の青年の姿があった。今の僕自信だ。その背中はひどく小さく見えた。
僕は青年に少しずつ近づいた。青年の横に辿り着くと、僕は横にしゃがみこんだ。
「もうすぐ、終わるよ」
青年は涙に濡れた顔をあげて僕を見つめた。
「母さんにはもう、暴力を奮われないのかい?」
「ああ」
「幸せそうな周りを羨まなくていいのかい?」
「ああ」
「未来を夢見ていいのかい?」
僕はその問いに返事はしなかった。僕は立ち上がり、青年を置いて歩き始めた。
「ねえ!」
青年が僕を呼ぶ。
「君はどうして何もかも諦めるんだよ!
僕は未来を追いかけたかったよ!たとえ夢に愛想つかされても!」
僕は歩調を早める。
「ちゃんと、子供を経て、大人になりたかった!」
僕は両手で胸を塞ぐ。
「母さんの思いを、先生の言葉を蔑ろにしていいのか!」
僕はついに走り始めた。
「何が就職して家族を幸せにするだ!こんな大事な時に周りの親切をかえりみないで!とんだ奴だな!お前は……お前には」
聞きたくない。
「お前は幸せになんて最初からなれない運命だったんだ!」
気づけば世界の重力はもとにもどっていた。
僕の目の前には地面が。
僕の体は風をきり、やがて周りの動きは全てスローモーションとなる。そのおかげで美しい朝焼けが見れた。あの夢の夕焼けによく似ていたけれど決定的に違うのは、あの朝焼けは夕焼けと言うには冷たすぎる。表面上だけ優しくとりつくろっているんだ。
もし、あの朝焼けが暖かく、表面も中身も優しい夕焼けだったのなら僕は踏みとどまれたのだろうか。半身の浮遊感に怯え、夕陽を全身に浴びて泣いたのだろうか。けれどそんな事はどうでもいいんだ。僕は遠いところへ行くのだから。
本当はこれが僕の本当の夢なんじゃないか?
自分の胸に問いかけると、こだまのように同じ言葉が無機質に返ってくるだけだった。きっと今の僕の心は空っぽなんだろう。
地面が近づく。僕は目を強く閉じた。
その時、不思議な事が起きた。世界が優しく、穏やかな桜色に染まったのだ。しかも、僕は桜色の地面に無傷足をつけている。不思議に思いながらも真っ直ぐに歩いてみた。
しばらく歩いて行くと、小さな少年がいつの間にか僕の隣を一緒に歩いていた。
「君は……君は誰?」
少年は僕の顔を見て可愛らしい笑みを浮かべた。
「僕はね、君だよ」
そうか。僕は不思議な走馬灯を見ているのだろう。これから思い出を巡るのか。
「ねぇ、君は将来の夢はあるの?」
「僕は、将来カッコいいパイロットになるんだ!」
少年はキラキラとした瞳で夢を語った。
「赤い飛行機に乗ってね、青い海の上を飛び回るんだよ!」
確かに、僕の幼い頃の夢はパイロットだった。あの頃は飛行機の模型を父と一緒によく作ったっけ。
「素敵な夢だね」
「うん!」
少年は子供らしい笑みを浮かべて、ふっと消えてしまった。
前を見ると、半歩先に小学校低学年程の僕がいた。また同じように隣を歩く。
「君の夢はなんだっけ?」
「僕の夢?僕の夢は警察官か消防士だよ!人の役人にたつ事をしたいんだ」
「そうなんだね。立派じゃないか」
僕がそう誉めると、少年は照れ臭そうに笑って消えていった。
周りを見渡すと、父と模型を組み立てる僕。母と一緒に洗濯物をたたむ僕。家族と一緒に夕食を食べる僕。どれも幸せそうな顔だ。僕は、そんな思い出をたちの真ん中を一人で孤独に進んだ。やがて、桜色がどこか寂しい紺碧に変わった時だった。幸せな思い出たちが消え去ったのだ。変わりに、目の前にうずくまる一人の青年の姿があった。今の僕自信だ。その背中はひどく小さく見えた。
僕は青年に少しずつ近づいた。青年の横に辿り着くと、僕は横にしゃがみこんだ。
「もうすぐ、終わるよ」
青年は涙に濡れた顔をあげて僕を見つめた。
「母さんにはもう、暴力を奮われないのかい?」
「ああ」
「幸せそうな周りを羨まなくていいのかい?」
「ああ」
「未来を夢見ていいのかい?」
僕はその問いに返事はしなかった。僕は立ち上がり、青年を置いて歩き始めた。
「ねえ!」
青年が僕を呼ぶ。
「君はどうして何もかも諦めるんだよ!
僕は未来を追いかけたかったよ!たとえ夢に愛想つかされても!」
僕は歩調を早める。
「ちゃんと、子供を経て、大人になりたかった!」
僕は両手で胸を塞ぐ。
「母さんの思いを、先生の言葉を蔑ろにしていいのか!」
僕はついに走り始めた。
「何が就職して家族を幸せにするだ!こんな大事な時に周りの親切をかえりみないで!とんだ奴だな!お前は……お前には」
聞きたくない。
「お前は幸せになんて最初からなれない運命だったんだ!」
気づけば世界の重力はもとにもどっていた。
僕の目の前には地面が。

