私は今、とても不思議な現象に
巻き込まれている。

目の前に死んだ〝はず〟の君が
微笑んでいるのだから。

10年前。
忘れもしないあの日、
炎天下の中君は私の目の前で

【死んだ。】

足早に行き交う人混みの中、
君は私の手を握り、前を歩いてくれた。
小さい背中だけれど、
私にはとても大きく感じた。
不思議と、笑みが溢れたときだった。

ドゴッ

とても、鈍い音がした。
顔には暖かい液体がついている。
私が握っているのは
君〝だった〟腕。

私には理解が追いつかなかった。
人々が叫び、悲鳴を上げる中。
私は目の前が暗くなった。