『しゅうとくん、一緒にかえろう?』
『え、あ...うん!』


モジモジしていた君を、幼い私はそう誘った。
別に深い意味はなくて、君が転校生だったからだ。


『秀斗、帰ろう』
『ああ、ちょっと待ってて』


学年が上がって、呼び捨てで呼びあって、それでも私は、君を誘った。
別に深い意味はなくて、それが小さい頃からの日常だったからだ。


『秀斗、帰らない?』
『わりい。俺、今日から部活入ったから、一緒に帰られるのは、火曜と木曜?ぐらいだ』


友達に誘われて、君は部活に入った。小5の夏、だったかな。
君はかっこよくなって、言葉づかいも男らしくなって、私との距離が、遠くなった。
でも気にしなかった。
君と私は、ただの友達だったからだ。


『...じゃあな。大人になったら、また会えるさ』
『......うん』


卒業式の後、君は私を裏庭に呼び出した。
知らなかったよ。君が引っ越してしまうなんて。
君は、また会える、と優しく声をかけてくれた。唇が弧の形になって、私を支えた。

――別に会わなくていいでしょ。

1年前の私は言うだろう。
でも今の私は、君の言葉を信じたかった。むしろ、大人になる前に会いたい。そう願った。
だって、私は、私は......


君が、好きだったから――......。