「…高木さんさ、 まだ教科書持ってねーだろ?」 隣の席の津村理久が 小さな声であたしに話しかけてきた。 1時間目の数学。 本当に教科書を持っていなかったあたしは、これが最初のチャンスだと思った。 「…そうなの、実はまだ…」 「俺の教科書、一緒に見ようよ。」 「ありがとう。そんなことに気づいてくれるなんて、津村くんって優しいね。」 本当は優しいとか 1ミリも思ってないけどね。