「相手の居る場所が分かったら便利だって言ってたじゃないですか……」

「俺の場合、仕事内容によっては居場所が知れたらいけない事もあるんだ」

「なにそれ、不平等反対」

せっかくの提案をあっさり切り捨てられてしまった飛鳥の不満はさらに強くなる。

ブツブツ不満を吐露しながらお茶を沸かしていると、和真が席を立ってキッチンの彼女の傍までやってきた。

飛鳥の両頬をその大きな片手でギュッと挟み、不細工顔になった彼女の顔を眺めて「口が過ぎる」と冷ややかに告げた。

「お前は、自分と俺が平等であるとでも思っているのか?」

「めっひょーもございましぇん(滅相もございません)……」

「分かっているならいい」

和真の手が離れると、飛鳥は不機嫌そうにプイッと顔を背けた。

何を思ったのか、和真はおもむろに彼女の頭を撫でる。

まるで、子猫を可愛がるかのようにゆっくりと優しく。