飛鳥は二十分ほどで買い物を終えて会計を済ませた。
両手いっぱいに買い物袋を抱えた自分自身が自動ドアのガラスに映って少々落胆する。
牛乳を購入するついでに他の買い物もしようとは思っていたがこんなに買ってしまうなんて。
みりんや砂糖など重たい物ばかり。
でも仕方がない。安いのだから。
同居人に買い物を手伝って欲しいと言えないところが悲しすぎる。
はぁ……と小さく溜め息をつきながらスーパーを出てすぐのこと。
背後から「あーすーかーちゃん!」と陽気な声が聞えてきて、飛鳥は足を止める。
こんな軽いノリで飛鳥をちゃん呼びする人は一人しかいない。
「喜島さん!」
「おやおや?覚えててくれたなんて嬉しいねぇ」
櫂人はにっこり笑って喜んでだ。
自らの秘密を知る人間のことを早々に忘れられるはずがない。
「約束もしてないのに飛鳥ちゃんに会えるとか、これって運命?ねぇ、ねぇ飛鳥ちゃん。今ヒマ?時間があるならまた飛鳥ちゃ――…!」
飛鳥は思わず櫂人の口元を両手で覆ってしまった。
櫂人の口を塞いだまま、周囲に目を凝らす。



