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しばらくして、飛鳥はぼんやりと目を覚ました。

冷たい床が頬に当たっている。

ハッして体を起こすが、抜けきらない薬のせいで頭がクラクラした。

「姫さんのお目覚めだ」

巨大なゲージの向こう側でリーダー格の男がソファーに腰掛けてほくそ笑んでいる。

その傍で数人の若いチンピラがゲラゲラと下品な笑みを浮かべていた。

「藤原の野郎にこんな娘がいたとは驚いた」とリーダー格の男は感心する。

「でも、この女……パッとしねーっすよ。男のガキみてぇ……」

彼の横に立つチンピラの一言で笑い声は一層増すが、パンッと鼓膜が破れそうな破裂音であたりは水を打ったように静まり返った。

「うわぁぁぁ……!痛ぇっ!痛……」

威勢のよかったチンピラは太股を押さえて地面にのたうち回る。

リーダー格の男が放った一発の銃弾が彼の左足を貫いたのだ。

「したっぱ風情が口に気を付けろや」

男は悪びれもせず銃を懐にしまうと、飛鳥を閉じ込めているゲージに近づいてしゃがむ。

「こういうのが好きな変態もいるんだよ。それに、コイツは磨けば光る上玉だ。
まぁ、恨むなら借金こさえた父親を恨むんだな。お幸せにな、姫さん……」

男が別れの台詞を口にした途端、巨大なゲージは下から押し上げられるように浮いていく。

「お父さんが何よ!意味分かんない!ちょっと、ここから出しなさいよ……!」

飛鳥の声も聞き届けられないまま、ゲージはどんどん浮上していった。