男性もさすがに驚いて少し体を引き「ま、まぁね……」と頷いた。


「今すぐ記憶から抹消して下さい!」


無茶だと分かっていながらも、飛鳥は一歩も引かない。

元々の知り合いなら仕方ないにしろ、これから築く人間関係は藤原 飛鳥という“男”で通していかなければならなかった。

外を出歩く自由と引き換えの条件なのだから。


「無理。俺、こう見えて記憶力は良い方だし。とくに女の子の事に関しては全く忘れられる気がしないんだけど」


飛鳥の鬼気迫る物言いも男性には届かずバッサリ一刀両断。

その上、頭を撫でてどこまでも女の子扱い。


「僕……男でいたいんですよね、ホント」



自由が無くなる――…



その焦りと不安が飛鳥の心を覆う。

実父に売られ、娯楽として買われ、自由な外出という誰にとっても当たり前のような生活環境を守るのにどれだけ必死かなんて、この人に話したって仕方ない事。

理解してなんて言わないから、せめて放っておいて。