一之瀬さんちの家政婦君


飛鳥は食材を持って和真のマンションに向かった。

玄関ロックを解除するための番号“061228”を入力する。

「あっ……」

思わず小さく声を上げてしまった。

こんな簡単なことにどうして気付かなかったのだろうか。

0612は六月十二日。

飛鳥の母 双葉の命日だった。

残りの28は母の名前“ふたば”だ。

出入りするたびに何度も何度も入力してきた番号のはずなのに全く気付きもしなかった。

あの頃の飛鳥にそんな余裕が無かった証拠。

彼はどれだけ母や自分のことを大事に気にかけてくれていたのだろうか。

飛鳥の心が喜びで満たされていく。


部屋に入ると懐かしい匂いがする。

和真がいつも使っているシトラス系の香水の香り。

香りだけが空間を覆っていて、本人はまだ帰宅していない様子。