「今だけだから……」
櫂人の口から零れ落ちるように囁(ささや)かれた懇願(こんがん)が深く切なく溶けていく。
和真に恋をしている飛鳥には彼の気持ちが理解できてしまうから、それ以上の抵抗はとてもできなかった。
こんなことを言ったら喜島さんは怒るかもしれないけれど――…
櫂人の腕の中で飛鳥が大人しくなったのを感じて、彼は穏やかに「許してくれてありがとう」と礼を言った。
「誰よりも幸せになるって約束して?」
「それはどうだろう……」
飛鳥は櫂人の願いに首を傾げる。
約束をしたいし、そうするつもりでいるけれど約束できるほどの自信があるわけない。
相手は一之瀬 和真だ。
“誰よりも”なんて都合よくはいかないだろう。
「困ったな。じゃないと、離せない……」
櫂人が拘束する腕の力が一段と縛りを強くした。



