マスターが出ていく際、店の外に吊るされている札を“準備中”に切り替えていたことなど店内に残った二人は知る由もない。
マスターが出掛けた後、櫂人と飛鳥の間に会話らしい会話がないまま数分の時が過ぎた。
何か話さなければ……と思いつつも気まずさ故に互いとも言葉が出ない。
飛鳥はコーヒーカップにミルクと角砂糖を入れてティースプーンでクルクルとかき混ぜる。
「……アタシ、大学に復学することにしました」
突然の近況報告に、櫂人は少しびっくりした様子で「そうなんだ」と返事をする。
「ちゃんと勉強して立派な社会人になって、借りたお金は返そうって。もちろん、今でもできるだけ働いて貯金とかしていかなきゃダメなんだけど……」
「そっか。バイトどうすんの?大学通いながら漁港で仕事は無理だろ?」



