「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは櫂人ではなくマスターだった。
「こんにちは。ご無沙汰しております」
飛鳥が丁寧にお辞儀をして挨拶をすると、マスターは木製トレーにお冷を乗せて「お好きな席へどうぞ」と案内する。
快気祝いの席では車いすに座っていたマスターだったが、ぼちぼちでも自分の足で立って歩けるほどに回復していて飛鳥は心から安堵したのだった。
日当たりの良い窓際の席に座りメニュー表に目を通す。
「ブレンドコーヒーを一つ」
「かしこまりました」
マスターは持ってきたお冷をテーブルに置いて注文を承ると、木製トレーを小脇に抱えて下がっていった。
いつもお店のどこかにいるはずの櫂人がいないことが飛鳥は気になった。



