「お前の気が済むようにすればいい。ただ、モタモタしていたら新しい家政婦を雇うかもしれないがな」
和真は飛鳥の頭をポンポンと軽く触れる。
続けた脅し文句も、滅多に見せない小さな笑みで分かり辛い冗談だと理解できた。
「はい。それじゃ、アタシ帰りますね」
飛鳥がソファーから腰を上げると、和真も合わせて立ち上がった。
飛鳥の後を追い、部屋の出入り扉まで見送りに出てくれる。
こんなことをされたのは初めてで、飛鳥はなんだか気持ちがくすぐったくなってくる。
彼女はドアの前で振り返り、和真にむかって一礼した。
部屋を出ようとドアノブに手を掛けた時、和真は自らの手でそれを阻止する。
思わず、彼の顔を見上げた飛鳥の唇に再度キスを落とす。
「待っているから……」
飛鳥は彼の部屋を出た後もその言葉が耳に焼き付いて離れなかった。



