彼の願いに応えたい。
マンションの前を張っていたのであろう雑誌記者をおもうと躊躇われる。
それに櫂人の告白にも返事をしていないままだ。
飛鳥は和真の腕の中からそっと離れて、柔らかく笑みを見せると「……すごく嬉しいです」と言葉を返した。
この一言は今の彼女が言える精一杯の本心だった。
「だったらすぐにでも――…」
和真の言葉を飛鳥は「待って」と遮ってしまう。
「アタシにもやらなきゃいけない事があります。それがちゃんと終わったら一之瀬さんちに戻るから。勝手に出て行ったくせに、戻る時まで自分勝手で本当に申し訳ないと思っています。でも今のままじゃ……」
今のままじゃ一之瀬さんのそばにいられない。
飛鳥は悔しさで奥歯をギリッと強く噛みしめた。



