それくらい、この腕の中が居心地良くてたまらない。
飛鳥の心臓が一際大きくドクンと脈打つ。
一之瀬さんが好きだ――…
鈍いばかりの感情を心音が気付かせてくれる。
この気持ちを今すぐにでも伝えたい。
しかし、出かかっている想いが喉元で引っかかって妨害している。
彼は飛鳥の母親だけではなく飛鳥自身にも恩があると言った。
今もこうして優しく抱きしめてくれる。
飛鳥がこの気持ちを伝えれば、もしかすると彼は受け入れてくれるのかもしれない。
本当にそれでいいの……?
飛鳥は心の奥底で自問して葛藤した。
今の自分は果たして彼に愛してもらうに値する人間なのだろうか。
「飛鳥、また俺のそばにいてくれないか」
葛藤の最中、和真の低い声が飛鳥の耳元で響く。
命令ではなく、消えてしまいそうな弱弱しい願いだった。



