一之瀬さんちの家政婦君


互いの唇が熱を帯びて離れていく。

「人の気も知らないで……」

和真は言葉を吐き捨てて、飛鳥の身体を解放した。

「コ、コーヒーでしたね!今、淹れますから……」

飛鳥は彼がコーヒーを欲していたことを咄嗟(とっさ)に思い出す。

スイートルーム備え付けのキッチンに身を隠すように足早に移動していく。

ポットに水を注ぎ、カップを二人分準備する。


さっきまで触れ合っていた唇が熱い。


飛鳥の指先が自然と自身の唇に触れる。


二人は口を閉ざしたまま一言も発しようとせず、数分の時が流れた。

飛鳥は準備が出来たコーヒーを小さめのトレーに乗せてソファーテーブルまで運ぶ。

和真の前にカップを一つ差し出し、飛鳥自身は向かいの席に腰を下ろした。

しかし、和真は飛鳥のカップを自分の横の席に移動させてしまう。