「お金を返しに来たんです。お給料が出たから」
飛鳥は現金の入った茶封筒を鞄から取り出すと、ゆっくりした足取りで和真の目の前まで移動をする。
それを差し出して「まだ全然足りませんけど」と一言添えた。
「お前はほんと……」
和真は自らの額に手を当てておもわず苦笑する。
馬鹿が付くほど真面目で頑固。
優しくて人が良いのはあの頃のまま。
差し出された茶封筒ごと飛鳥の身体を抱き寄せた。
「俺がどんな想いで――…」
「えっ、何?一之瀬さん……?」
「何でもない」
飛鳥を抱きしめる腕に力が入る。
和真の心臓の鼓動が耳に届いて、飛鳥は身体中の血液が沸騰しそうになった。
こんな風に強く誰かに抱きしめられたのは生まれて初めて。
どうすることもできなくて、飛鳥はしばらくそのまま動けないでいた。



