一之瀬さんちの家政婦君


雑誌記者がいたなんて飛鳥は微塵も気付かなかった。

黒いスカートにグレーのニット。

今日の自分の格好を見て心底安堵する。

あのままマンションに入っていけば何を書かれるか分からなかった。

改めて思うのは、一之瀬 和真が一流企業の御曹司であり顔の知れた有名人である事。

女が出入りしている事が世間に知られればイメージは急降下していくだろう。

その女というのがどこにでもいる普通の女子大生どころか、飛鳥のような借金だらけの訳あり女なら尚更。

和真が男装を強要してきた理由がなんとなく理解できた気がした。



アタシのような女をそばにおいているのを隠したかったんだ……



悔しいけど納得だった。

飛鳥は深いため息を零す。

「誤解のないように申し上げておくと、和真様は保身にこだわるような肝の小さい人間ではございません。全てはあなたの為ですよ」

「アタシの為……?」