「私、一之瀬 和真の世話役を務めております杉下(すぎした)と申します。ここではお話しがし辛くございますので、こちらへ……」
杉下は穏やかな口調で路地の先を指し示す。
路地を抜けた先には黒い乗用車が停車していた。
飛鳥は促されるまま杉下の後をついていく。
車のそばまでやってくると「どうぞ」と扉を開けられ、飛鳥は無言で車に乗った。
後部座席の扉を閉めた杉下は運転席に座り自らハンドルを握る。
どこに行くのかも、何がしたいのかも分からない。
ただ、飛鳥の心に恐怖心は無かった。
彼がとても聡明な人間にうつったから。
「藤原 飛鳥様、先ほどは失礼を致しました。あのマンションの前には週刊誌の記者が数人はっておりましたので」
杉下はルームミラーで目配せしながら事情を説明する。



