マンションの入り口まであと少しというところで、背後から誰かに肩を叩かれた。
そして、飛鳥はそのまま問答無用で昼間でも薄暗い細い路地へ連れ込まれる。
「えっ……ちょっと……!」
後ろから羽交い絞めにされていて相手が男なのか女なのかさえ分からない。
こんな事、前にもあったような……
飛鳥は借金取りに拘束された夜の事を思い出す。
危険を感じると、されるがままの体に力を込めてグッと踏みとどまった。
「は、離してっ!」
飛鳥が渾身の力で相手の腕を振り払うと、案外簡単に拘束は解かれた。
「手荒なことをしてしまい申し訳ありません」
彼女の前に立っていたのは、白髪交じりの老紳士だった。
老紳士は小柄で飛鳥と同じくらいの身長しかなく、背広をきちっと着こなした品のある男性だ。



