恋愛の手引き

「…うるさい」

柏原はチラッと私を見るとスタスタと歩き始めた。

私はその後を追い掛ける。

「ちょっと、なんでそんなに怒ってるのよ!!」

柏原の腕をぐっと掴んだ。

柏原は立ち止まって

「…なあ」

「何?」

「今日もさ、平野さん。
クラスの奴に告白されてた。
僕なんかが必死になっても、相手にされないんじゃない?」

柏原の、我慢に我慢を重ねている苦しそうな目が私を刺す。

「…少なくとも、真由は柏原の事、嫌いじゃないわよ。
むしろ好きな部類」

なだめようとしたけれど。

「じゃあ、なんで…」

唇を噛んだ柏原は俯いた。

「一生懸命、話かけてもわかんないんだ。
平野さんがああいう風に断るのを見ると、僕もそうなるんじゃないかと思う」



それはない。

私には確信がある。



「柏原、行こう」