「あら!

小春ちゃん?どうかしたの?」




「あっ!いや、これは…



翔太が無理矢理…」






「安城先生、小春の顔色が悪いので診てほしいんですけど。」





「本当ね。いつもより顔が真っ白ね。ちょっとベッドに横になってもらえる?


ってあれ!?小春ちゃんは?」






「小春!?」








ハァハァ…。




屋上まで来れば大丈夫だよね。




安城先生の話の途中で、抜け出して来てしまった。





あのまま、ヘッドに横になったら絶対千秋に連絡されるよね。






安城先生と千秋は、幼馴染で安城先生には私と夏姫がよくお世話になった。






繋がりが深いからこそ怖い。







あ〜あ…。





教室戻れなくなっちゃったな…。






教室戻ったら、翔太と紫苑にまた保健室に連れて行かれるよね。






「はる。」





「冷たい!」





「こんな所で、何してるの?」





「陽向先輩こそ、どうしてここに?」





「あ〜、小春が音楽室に来なかったからもしかしたらって思って。」






私の頬に、オレンジの缶ジュースを当ててきたのは、アルトサックスの先輩で私の彼氏でもある園田陽向。






身長が高くて、格好よくて吹奏楽部なのにスポーツもできる。






「何思い詰めた顔してるの?」






陽向先輩には、何故か素直に何でも話せてしまう。






「いいよ、ゆっくりでいいから話してご覧。」






私は、気づいたら涙が溢れ出ていた。






そんな様子を見た陽向先輩は、私の頭を先輩の胸に優しく引き寄せた。






「大丈夫。」





優しく背中を擦りながら、乱れる呼吸を落ち着かせてくれた。







「陽向…。



ごめんね。」








「何で謝るの?



何か、謝らないといけないことした?」






「してない…。」







「それなら、謝らなくていいんだよ。」







「あ!こんな所にいた!」






「紫苑…。」






「陽向先輩、すみません。



ちょっと、小春連れて行ってもいいですか?」







「えっ?」







「小春ちゃん、千秋には言わないからちょっと診させてもらえない?」






「陽向、また後で連絡するね。」






「心配だから、俺も行くよ。」






「こら。3年生は、今日大学説明会でしょう。陽向君は必ず聞かないといけないやつでしょう。小春ちゃんのこと、心配だとは思うけど私に任せて。」






「だけど。」






「陽向、教室に戻って。


必ず、連絡するから。」





「分かった。無理はするなよ。」



私は、陽向にそう言われてから大人しく安城先生と紫苑、翔太と一緒に保健室へと向かった。