ーside千秋ー



「おはよう。」



まだ冴えない頭で、目を擦りながら階段を降りてくる小春。


階段を降りてきただけなのに、息が上がっていることが分かる。





「小春?」





「何?」



俺は、小春に近寄り顔色を見る。





「苦しいのか?」






小春の額に手を置いても、特に熱があるようには思えない。






「何でもないよ。」







小春は昔から、何か隠し事をしていると目を合わせようとしない。





だから、小春の嘘くらいすぐに分かる。






歳はいくら離れていても、大切な妹なんだから少しでも小さな小春の変化に気づかない訳がない。







「小春、ちょっと診察させて。」







「何でもないから。」






「じゃあ、顔上げろよ。」







半ば無理矢理、小春の顔をあげた。






「はるちゃん、千秋何してるの?」






こんなやり取りをしていると、1番下の妹である夏姫が起きてきた。





「夏姫、ちょっと手伝ってくれ。



小春ベッドに運ぶぞ。」






「えっ?はるちゃんどこが悪いの?」








「それは、診てみないと分かんない。」







「もう!いい加減にしてよ。」






とうとう、小春を怒らせてしまった。






「私は大丈夫!


ちょっと、徹夜が続いて元気がないように見えただけだよ。」





「小春?」






「早く、朝ご飯食べよう。」






「じゃあさ、小春。


何かあったら、すぐに呼んで。」





「分かった。」



俺は、小春と約束をしてから家を出た。