痛い痛いと、イツが耳を引っ張っている俺の手をトントンと叩いたので、仕方なく俺はその手を離してやった。
もう手は離したはずなのにまだ大げさに耳を押さえて痛がる仕草をするイツを少し睨みながら、組んでいる腕をそっと心臓に当てた。
俺は素直に自分の感情を言える性格ではないから、こんなにも緊張しているなんてことは死んでも言えない。
強がりとはいえ、イツをいじめてしまったことは、ほんのほんのほんの少しだけ反省している。
だからきっと、イツも許してくれるだろう。
現にイツも、さっきの痛がりようは何だったのか、もう音生を口説きに行っているじゃないか。
「おい、何音生を口説いてんだよ、オタク」
「オタクって…!てか口説いていません!!会話してたんです!」
俺は冗談交じりに、イツを軽く睨んだ。
『今日の椿は緊張しておしゃべりだね』
すると、そんな俺に音生がそう書いた紙を渡してきて、俺は思わず声を裏返しながら
「はっ!?な、なに言って…」
と言ってしまい、その裏返った声が恥ずかしくなって咳を一つして分かりやすくごまかした。


