俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません




俺を放ったらかして二人で楽しそうに話しているのが何となく気に食わなくて、俺はイツの髪の毛をグッと引っ張った。

「うん、ありがとうっと……ぬわっ!?痛い痛い痛い!!何なんですか、さっきから!」

「うるせえ、俺を抜いて会話すんな」

「はあ!?どんな理不尽っ!」

「それより、バンド名決めるぞ」

俺は文句を言いたそうなイツを無視して、ペンを手に取った。


『バンド名どうする?』

『あ、そうだったね。どんなのが良いかな?英語とか?』

『英語がいいです!』

『私ね、今日の光くんみたいに馬鹿にされることってこれから何度もあると思うの。そうやってずっと偏見の目に晒されていくんだろうって。つまり、私達は世界中のバンドの、社会の底辺で生きているバンド。だけど、だからこそ、私達は底辺から、底から、この世界を全てひっくり返せるんだって思う。そんなバンドになるんだって。それをバンド名に入れたいな』

音生の深い思いに、俺もイツもふざけるのを止めて、真剣な顔でその紙を見つめる。


「世界の底辺バンド……か。いいじゃん」