俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません




俺は落としたコップを拾って元に戻すと、音生の顔を見た。

すると音生が俺に微笑みかけたので、俺も不器用ながら小さな笑みを返した。


「…ったく、無駄に疲れたわ」

俺はソファにドカッと座ると、大きなため息を吐いた。
その横にちょこんと座った音生は、俺にメモ帳を渡す。

『私をかばってくれて、ありがとうね』

「…はあ。お前もさ…」

『音生も結構良い性格してるんだな』

俺は微笑みながら紙を音生に手渡す。


『どういうこと?』

『光にあんなズバズバと、気持ちいいくらい言ってたじゃん。お前も案外強かったんだなーって思ったよ。でも、おかげでスッキリしたわ』

『だって許せなかったんだもん、あの態度。私だってそれなりに色々あったから、強いよ。話すことがないからあんまりそう思われないけど』

「ははっ、まあ確かにな」

「ちょっと!二人だけで話さないで下さい!」

いつの間にか立ち上がっていた橋本が俺らの間に入って来た。


「お前は関係ねえよ」

「そのメモ帳とペン、貸して下さい!俺も会話に入りたいです!」

そう言って俺からメモ帳とペンを取ろうとする橋本を、俺は両手を上げることで阻止した。