俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません




しかし、ゴクっと唾を飲み込む音が微かに聞こえた直後、バッとその顔を上げて、

「俺は、もう貴方には従いません。俺は弱いです。だけど、自分を捨てたわけじゃありません。俺の人生は、俺が決めます。俺は音生さんの歌声、すっごく良いと思いました。何かが変わるんじゃないかって思いました。何かっていうのは、上手く言えないけど……俺自身の人生も、この世界も、全部変えてくれるって思いました。そんな力があるって」

「おまっ、何言って……」

「俺は全然夢物語じゃないと思います。音生さんなら、この歌声なら、絶対何かを変えられます。でっかいことを成し遂げられる気がします。だから俺は、信じます。俺は、俺は…このバンドに入ります」

光を真っすぐに見つめる彼は、もう数分前の弱々しい橋本伊月じゃなかった。
相変わらず手は震えていたが、その背中はとても大きく見えた。

音生と出会った時に感じたのと同じ感覚が再び俺を襲う。
音生と同じ強い力を秘めた彼を見ながら、俺は絶対俺らのバンドのメンバーにすると決めた。


光はそんな橋本に面食らったようだが、それでも強がって偉そうな態度を保って、

「…へ、へえ?じゃあ、いいんだ。これからどうなっても」