俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



「……んだよ」

最後まで読み終えた光は、三枚目の紙を他の二枚よりも一層ぐちゃぐちゃにして投げ捨てると、鞄を持ってドアの方へ向かって歩く。

俺も音生もその様子をただ黙って見つめる。
けれど、俺よりも音生の目の方が光を睨んでいた。

しかしすぐに、はっとした表情を浮かべて再びペンを走らせる。
俺がそんなイメージとかなり違う表情をしている今の音生を呆然と見つめていると、ドアノブを握る光がこちらを振り返り、

「おい、伊月。行くぞ」

と言った。

「えっ……」

橋本は戸惑った様子でキョロキョロと目を動かす。


結局、またメンバー探しからかと落胆しながらも、光と組むよりはメンバーがいない方がましだし、音生も嫌そうなので別にいいかと思った。