俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



「……音生、ごめん」

俺は無理矢理音生の腕を解き、殴ろうと勢いよく光に近づく。

でも、俺が光を殴るよりも先に音生が光の前に立ち塞がり、俺を制止するように両手を広げる。

「音生、そこどけよ」

退かないと言うかのように俺を強い瞳で見つめた後、音生はメモ帳に荒っぽく何かを書き始める。
その後ろで嫌味ったらしく微笑んでいる光を睨みつけながら、音生が書き終わるのを待った。

何とか今にも殴りかかりそうになる感情に耐えていると、音生はメモ帳から書き終えた紙を切り離し、光に押し付けるように渡した。


『私は聴覚障害者です。あなたが何を言っていたのかも、椿がどうして怒っているのかも、正直はっきりとは分からない。イツキくんが怯えている理由も、何も聞こえない。だけど、私には目があります。心があります。だから分かります。あなたは、私を、あなた以外の人間を全て馬鹿にしている。一見自分より弱く見える誰かをいじめて、下に見て優越感に浸らなければ自分を保てないんでしょう。』

「……っ」

光の目の奥が揺れていて、動揺していることが分かった。
音生は何を伝えているのだろう。

音生は光が紙を読んでいる間にさっさともう一枚書き終えて、それを再び光に渡す。