それを何度か繰り返すと、
「あー」
「ピコンピコンッ」
一際大きな音が鳴って、音生は声を出すのを止めた。
そしてメモ帳を手に取ると何やら書き出す。
「え?終わったの?」
音生に紙を差し出され、俺はそれを受け取ると内容を読み上げた。
「これは、音程の高さを合わせる練習です。声を出すと音程を判断してくれるアプリを使っています。例えば、歌でソの音が必要な時、アプリでソという判断が出るまで声を出し続けます。ソと判断が出たらその感覚を覚える。そうやって一音ずつ音程を覚えていっています……って」
「えっ、すごい」
今まで一言も喋らなかった橋本が感嘆の声を漏らし、俺は彼に視線を向ける。
そんな俺を橋本も見て、初めてこんなにちゃんと目が合った気がした。
俺と橋本は正反対の性格に思えるが、思っていることは同じようだ。
それは極々単純な感想、‘すごい’という三文字の何とも安い言葉。
ただ、俺の場合は前のあれはなんだったのか?という疑問も合わせて浮かんだ。


