俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



俺は間髪入れずにそう言って、嫌がる光を強引に引っ張る。

何はともあれ、橋本が味方になってくれたのは良いチャンスだ。


「あっ、音生」

俺は事前に書いていたメモを音生に見せた。

『今からカラオケ店に行く』

それを見せると音生は嬉しそうな表情して、徐ろに何かをメモ帳に書き始めた。

『じゃあ、バンド組んでくれるの?』

まだそうとは決まっていないが、嬉しそうな音生に分からないなんて言えないし、違うと紙に書こうと思っても、今光の腕を離すわけにはいかないので、俺は音生に微笑み返した。




そうして何とかカラオケに来たわけだが。


「で?さっさと歌ってよ。俺も暇じゃないんで」

光の機嫌の悪さは全く直らない。

どさっとソファに座った光は偉そうに腕を組んだ。
その隣で静かに直立する橋本。

すっかり出来上がった主従関係が妙に懐かしくて苛立った。