などと、ぼんやり先のことを考えている場合じゃなかったことに俺は気付く。
俺は考え事をしていて逸らしていた目線の先を再び橋本に戻して、口ごもっている彼の顔をじっと見つめた。
光に怯えている彼の言おうとしていることは全く見当も付かないが、俺にとって良いものでないことは何となく勘付いている。
女の勘があるなら、男の勘だ。
「……おい、早く喋れよ」
光が急かす。
「僕……行きたいです…その……カラオケ」
いや、やはりそんな勘はなかった。
俺と同様、光も彼がそんなことを言うとは思っていなかったようで目を丸くさせたが、すぐに彼を睨み返して、
「何言ってるんだよ、伊月」
と言った。
それでも縮こまらずに、彼はもう一度はっきりと口にした。
「カラオケに行きたいです。おと…はさんの声を聴いてからでも遅くないですよね?」
「おまっ……」
「まあまあっ、橋本くんもそう言ってるんだしさ。ほんじゃあ、行くか!」


