俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



しかし、一番心配なのは音生だ。
いくら女の手前といえど、橋本に対するいじめは止めないだろう。
しかも、音生が聴覚障害者だと知ってしまったということは、もしかしたら音生が次の標的になるかもしれない。

橋本が光に散々虐められているところ音生には見せたくないし、一番嫌なのは、音生自身が傷ついてしまうことだ。

けれど、俺にはこいつしか頼る相手がいない。
自分の低レベルな友人関係を、初めて情けなく思った。


もし光が音生を傷つけるようなことをしたら、その時は追い出してやろうと思う。
確かに、ギターが抜けるのはかなりの痛手であるが、ドラムが手に入ればスリーピースバンドは出来る。
そこからゆっくりギターを探していけばいい。

そこまで単純に考えて俺は、もし光が抜けたらドラムを担当してくれる取り巻きの橋本まで抜けてしまうということに気が付いた。
橋本に抜けられるということはつまり、ドラムまでいなくなり、元の二人になるということだ。
それは痛い。痛すぎる。

どうしたものかと悩みつつ、まだ新しいメンバーを探しながら我慢してやっていくしかないなと、答えを導き始めていた。