俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



光は昔から、色んなやつを“取り巻き”と呼んで、虐めてきた。
俗に言うパシリというものなのだが、気にいらないことがあると暴力を振るうことも当たり前だった。
反抗なんてした日には、学校へ来れなくなるほどの精神的、肉体的苦痛を与えることはよくあった。

一度、光の取り巻きの一人が自殺したことがあったのだが、それは光によるいじめのせいだと言われていたほどだ。
光の父親はどこかの権力者のようで、お金で揉み消したらしいけれど。

今まで色んなやつを虐めてきて、そのことに何の感情も抱かなかった奴だったが、流石にあの時は光も落ち込んでいて、それから随分大人しくなったと思っていたのに、こいつは懲りずにまた同じことをしているのか。
そのことに、心底呆れる。


いつの間にか、あの罪悪感という傷も光の中から消えてしまったなんて、死んだ取り巻きも報われないなと哀れに思う。

そんなことを言っている俺だって、隣にいながら何も止めず、見てすらいなければ、それどころかそいつの名前すら覚えていないのだから、同罪だろう。


俺が中学生の時から何一つ変わらず俺であるように、光も何一つ変わらない光なのだろう。
今度の標的になった橋本も、可哀想だ。
死なない程度に逃げてほしいと思う。