狐と少年。


*翌朝*

私はいつも通り神社の裏で少年を待つ。
お母様の情報だと、狐は人間に化けるには相当な体力を使うと。
だからあまり長く人間ではいられないようだ。
無理してしまうと命を落とす危険もあると。
狐が人間でいられる最大時間は、約1時間。
それ以上人間でいると、命を落とす可能性が大らしい。

(…自分の命に関わることなのか…。)

私は昨日、それを聞いて、やめようかと思った。
命に関わることなら、狐の男の子と恋をした方が、
私的にはとても良いのではないかと思った。
けれど、そう簡単にはもう諦められないようだ。

(あ、少年の足音。)

遠くから少年の足音が聞こえてくる。
どんどんこちらに少年が近づくにつれて、
私の心臓がどんどん速くなる。
狐など、急に出てきて、驚いて逃げないだろうか。
心配と怖いっという感情が交差する。

「急に出るのもあれだし…神社の前で座ってるか…。」

私はそう言うと、すぐさま神社の前に座って待つ。
何分か待った時、少年が角から出てきた。
すると少し驚いた表情を見せると、目をきらんきらんさせながら、
少年が走ってくる。

(わぁ、、なんという可愛らしい表情だ…。)

私はその表情を見ると自然に立ち上がる。

「わぁ、、俺、、生で狐なんて見るの初めてだ…。」

そう言うと少年は私の目をじっと見つめる。
顔をそらしたいけれど、ここでそらしたらいけないような気がする。

「…触ってもいいかな。」

少年がそっと私に聞く。
私は少しずつ、少年に近づく。

「…触ってもいいのか…」

少年の手が少しずつ私の頭に近づいてくる。
その度に私の心臓の鼓動が速くなる。

「わぁ、ふわふわだな。」

少年の手が私の頭に触れる。
その瞬間、少年の顔が可愛いらしい笑顔に変わる。
私の体が少しずつ光り出す。

「うわぁあ!?眩しいっ」

少年が私の頭から手を離そうとする。
ギリギリで人間の手になった私の手で、
少年の手を掴む。

「へ…ちょ、、」

少年はまだ理解できていないようだ。
私もついていけてないが、これで私は少しの間、
人間に化けられる。

「…ほんとに人間になれた…。」

私は少年の手を握ったまま、自分の手を見る。

「……狐が……人間に……」

少年がびっくりしたような顔で私を見つめる。
ほんとは少年は逃げてしまうんじゃないかという心配があったが、
どんどん少年の目はキラキラ輝き出す。

「お、お前、狐だったよな!?すげぇ!!人間になった!!」

そう言うと少年はまた可愛いらしい笑顔を私に向ける。
…人間として私…少年の前にいられてるんだ…。
胸が高まる。

「…少年…歳は何歳だ!?どこに住んでるんだ!?どうして毎日神社に朝方くるんだ!?」

今まで聞きたかった事が多すぎて、少年にどんどん質問してしまう私に対して、少年は目をまだキラキラ輝かせて私の手を握り返す。

「へっ!?少年!?どーしたんだ!?」

顔がどんどん熱くなる。
なんだ!?何で顔が熱いんだ!?
私は空いてるもう片方の手で自分の頬に手を置く。