それは突然の事だった。

神社の裏に住み着いてる私達、狐は、
いつも神社にお参りしにくる少年を知っている。

何を願っているのかは謎だが、
その少年は、とても綺麗な目をしていて、
見つめてると、吸い込まれそうになる。

「あ、今日もきたのだな。」

いつも朝方にくる少年。
私は毎晩毎晩、その少年が来る朝方を楽しみにしている。

いつもは影から見てるだけの私だけど、
前々から気になってる少年に近づきたい思いがあったため、
今日は猫に化けて、少年に近づいてみる。

「ニャー。」

私は猫に化けると、早速少年の元へと近づく。
私の鳴き声に気づいたのか、少年は優しい笑みを浮かべると、
私の頭をわしゃわしゃ撫でる。

人間の温もりなど、いつぶりだろうか。
温かくて…気持ちいい。

私はふと、少年の顔をもう1度見てみる。
やはり綺麗な目。
その優しく笑った時に出たえくぼが、
とても可愛らしい。

私の心臓が高まり出す。
なんかきゅーっとなって…この人の傍にまだいたくて…。
まだ…触っていてほしくて…。

少年を見つめていると、私の頭から少年の手が離れる。

「俺、もう行かないと。バイバイ、猫ちゃん。」

そう言うと少年は私に背を向け行ってしまった。
少年がいなくなった神社は、とても悲しく見えた。
もう少し触って欲しかった。
もう少し一緒にいたかった。

まだドキドキ速い心臓。

これが私、狐の恋のはじまりだった