何年ぶりかに見る御来屋は、すっかり大人っぽくなっていた。引き締まったような体つきや、日焼けした顔。それに比べて私は笑ってしまうくらい微妙だ。



「先輩」
「うん?」



 懐かしいい呼び方だな、と思う。



「その調子じゃ、知らないんですね」
「何が?」
「俺、してやりましたよ」
「なにを?まさか」
「まーさーかー?」
「結婚した?―――レシートです」
「え!?違いますよ。もー、すっかり忘れてるんですね」



 忘れてるってか。
 御来屋のことだって、今顔を見たから思い出したのだ。何を忘れているというのか。
 
 今の今まで御来屋のことをすっかり忘れていたのだから、まだなにか忘れていてもおかしくはない。客がいないことをいいことに、御来屋はレジの前で答えを待っている。


 御来屋は、こんな感じだった。

 どこからかふらりとやってきては、御来屋から話してくる。私はあまり話すのが得意な方ではなかったので、それに返事を返せばいいから少し楽だった。それに彼は気さくで、なんだか親しみやすかったのだ。

 先輩、といえば名前なんて知らなくても年上の学年皆に通じてしまう。まあ、彼の場合名前を聞いてきた気がする。


 雰囲気は高校の時と比べると大人びたと思うが、こうして喋ってみると、懐かしい感じしかしない、
 さて、なんだったかな。
 


「俺は覚えてたのにな」



 残念そうに言われて、なんだか申し訳なくなって謝ると、いやいやと御来屋は平気だと手をふる。「あ、これ言えば思い出すかも」というので、続きを促す。