「セーヌ川クルーズしようか」
 恵斗さんがそう言ってくれた。
「いいの?」
「せっかくパリに来たんだもんな」

 ちょうどモダンなデザインの遊覧船がとまっていたので、わたしたちは乗船した。

 ゆっくりと船が動き出し、さっきとはまた違った角度でパリの街を見渡す。

 素敵。どこもかしこも、素敵。

「本当にごめんな、ココ」

「いいよ、もう。こうやって巡り合えたんだもん」

 わたしはぎゅっと恵斗さんの腕に抱きついた。

 こんなこと、日本じゃ絶対嫌がるよね。今のうちにいっぱいベタベタしていかなきゃ。

「ココ。オレさ、ココを探しているあいだ、ずっと考えてたことがある」

「なに?」

「ココと出会ってからのこと」

「恵斗さん、わたしのことブタコって呼んでたよね」

「ああ…まあ…。そんなときもあったっけな」

「忘れません」

「ごめん。丸くて、かわいかったから」

 もう、またそんなこと言って機嫌とろうとして。

「正直、こんなに好きになるとは思ってなかった」

「……」

 どきん

「だから、ココのこと探しながらも、絶対に見つかる自信があった。地球のどこにいたって、オレはココのこと見つけてみせる」

「やだ、恵斗さんったら」

 どきん

 恵斗さんらしくないロマンチックなセリフ。パリの街がそうさせているのかな。