「えーっとぉ」

 さっきの八百長の審査員、2人目のギャルがおずおずと申し出た。
「ぶっちゃけー、オーナーのタルトよりも、そっちの方がチョーおいしかったっていうか」

 続いて黒髪のおかっぱの女性も
「実は、わたしも…」

「な、何ぃ! お、おまえら…」
 シカオは「く、くそう!」と悔しそうにうなった。そして

「わかったよ! オレの負けだ! 悪魔のショコラロールケーキはもう作らないし、謝罪もする! そしてこの場所から撤退もしてやるよ!」

 シカオはそう怒鳴り、恵斗さんの方を向き、土下座をしようとした。

 恵斗さんはしばらく黙って考えていたが、静かに口を開いた。

「いや、もういいよ」

「へ?」

 わたしもシカオも驚いて間の抜けた声を出してしまった。

「オレも売られたケンカにのっかって意地張って、大人げなかったな。悪魔のショコラロールケーキは、おまえにやる! 好きにしろ!」

 ええー!!

「い、いいんですか? 恵斗さん」
 わたしは驚いてそう訊いた。

「ああ、いいんだ。あのケーキはこの店の方が似合ってるもんな」

 確かに、悪魔…だもんね。

「ココの言葉でオレは目が覚めた」
 
 え? わたしの?

「ケーキはそもそも誰が考えたかとか、どの店で売るかなんて意味なくて…。たくさんの人に食べてもらえて喜んでもらえたら、オレはそれだけで満足なんだ」


 恵斗さん…