恵斗さんがあの悪魔、シカオに負けるなんて

 そんなの、あり得ない。

 絶対に絶対に。


 悔しさを隠せない恵斗さん。唇を噛みしめ下を向いている。

 わたしはどう声をかけていいのかわからなかった。

 そのとき。

 
 シカオ・シブヤの女性店員が一人、売り場に現れた。彼女はマスクをしていて顔は隠れている。
 でも、わたしはピンときた。
 おかっぱで黒い髪。見覚えがある。あの人は!

 「あのっ! もしかして、あなたは」

 わたしは女性に駆け寄った。そして素早くマスクをはずした。
「あっ、何をするの!」

「やっぱり! さっき、シュークリームを審査した一人目のお客さんですよね!」

 店内がざわついた。

「ここの従業員だったんですか!」

「何ぃ!」
 恵斗さんもビックリ。
「あっ!」
 シカオは焦った様子。

 八百長だったの!?

「す、すみません、オーナー」女性はシカオに謝っている。

「おまえ、どこまで汚いんだ! こんなことまでして勝ちたいのか」
「うるせー! 2人目のギャルは本物の…」

「オーナー、もう勝負ついたってカンジですかー?」
 後ろからさっきのギャルが。

 呆れたことに2人ともシカオ・シブヤの店員だったのだ。