今日は新作「悪魔のショコラロールケーキ」の発売日!

 わたしはいつもよりも早く出勤して、恵斗さんのケーキ作りを手伝った。

「たくさん売れるといいですね!」

「売れるに決まってるだろ」

 自信満々の恵斗さん。

 そりゃそうだよね。だって恵斗さんは天才だもの。


「恵斗! ココちゃん! たいへんだ!!」
 オーナーが血相を変えてわたしたちの元にやってきた。

「どうしたんですかオーナー」

「すぐ近くにもパティスリーがオープンしたそうなんだ」

「ええー?」
 シャルロットにライバル店が?
 わたしは驚いた。でも、恵斗さんは顔色ひとつ変えなかった。

「なんだ。それくらいのことか。別に関係ねーだろ。ウチはウチらしくやっていけば」

 うん、確かに。恵斗さんの言う通り。

「そ、それがっ!! と、とにかく!! 今すぐテレビを見てみろ!!」

 テレビ?

 わたしたちはテレビのある2階の事務所に上がった。

 すると情報番組が流れていた。

「話題のパティスリー、シカオ・シブヤ。第35号店となるショップがいよいよ本日、オープンです!」
 レポーターがそう告げていた。画面には真っ黒のビルが映し出されていて、行列をなしていた。

「わ! すごい行列!」

 行列の中の一人がインタビューに答えていた。
「朝6時から並んでます!」
「お目当てのケーキがあるんですか?」
「ハイ! もちろん!」

 わたしたちは次の瞬間、目を疑った。

「こちらが発売前からネットで話題の、悪魔のショコラロールケーキです!」

 レポーターが手にしているのは、そう、恵斗さんのあのケーキ!

「ええっ! ど、どうして!」
 わたしは驚いてそう叫ぶしかなかった。

 そしてさらに、驚きの事実が。

「それではオーナーとパティシエ兼任の渋谷シカオさんにお話しを伺いましょう!」

 あ!

 そこに登場した「渋谷シカオ」とは…


 悪魔さん!

 あなただったなんて…