目をあけるとそこはベッドの上だった。

多分ここはホテルの控え室だろう。
救急箱やタオルがたくさん置いてある。

「おっ、起きたか」

ガラッとドアが開き、佐伯先生が中に入ってきた。

「先生…助けてくれてありがとうございます…」

「おう」と先生は頷く。

私は枝で手を切って、熱のせいで頭がくらくらして。
その後何があったかは分かんないけど
先生が助けてくれたのは確か。

あのとき…

『横澤!!』

なんて、言って走ってきてくれた先生、
ほんとにかっこよかった。

そのことを思い出すと、自然と頬が緩む。

「…ったく、お前はなににやけてんだよ?幸せもんだなぁ。」

すると先生は私を見てにこっと笑った。

「んま、意識が戻って安心したわ!」

…かっこいい。

先生が笑った顔はほんとにかっこよくて。

誰が見ても「かっこいい」って思うような
そんな笑顔だった。

「あ、てゆーかお前」

なにかを思い出したかのように私を見た。

「?」なんだろう…。そう思って首を傾げると、

「寝てる時、よだれたらすのやめた方がいいぞ」

………は?

よ、よだれ…?

「寝ながらよだれって子供かよ?」

「そ、そんなとこみてたんですか?!」

「おうよ」


ばっ、ばか、先生の前でいびきとよだれって…。
印象が悪くなっちゃうじゃん…!
ほんと最悪…。

がっくし

肩を落として落ち込む。

落ち込んでる私を見て、先生は立ち上がり

「うそだけどなー」

そう言って先生は控え室を出ていってしまった。

え……?

うそ?

「はぁぁぁぁぁ!?!?」

ばっとその場に立ち上がり控え室を飛び出した。

「せんせーーー!!!」

うそなんてひどすぎる!!
先生のばか!

バタバタと後ろから音がするから
先生は何事かと思って「ん?」と振り向いた。

「先生ってばうそついてたん…っ!?」

ぐきっ

!!

足捻った!?

前に転ける!

そう思ったとき

「…っ横澤」

先生が私の腕を掴み、先生の大きな体に引き寄せられた。

先生が、私を抱きしめている。

え…?

今、なにが起こってるの…?
夢?夢だよね?だって…私…先生に、
抱きしめられてるんだよ…?
やばい心臓が…。

「せ、せんせ…っ」

心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思って体を離そうとした

けど、

「…もう少しこのままでいさせて。」

先生は落ち着いた声で言ってきて…

私は「…はい」と答えるしかなかった。