「横澤」

ある日、瀬戸くんに声をかけられた。

「なに?」

私は振り返って瀬戸くんを見る。

「あのさ…」照れくさそうに頭をかく

「俺さ、横澤のこと諦められないんだけど」

真剣な眼差しで言う瀬戸くん。

そんなこと言われても……

私にはもう先生っていう人に恋をしている。

しかも廊下でこんなこと言うなんて、

瀬戸くん、おそるべし。

「え、えっと…私…」

好きな人がいます。そう言おうとしたとき

「お願いします」

瀬戸くんは私の前で頭を下げた。

え!?こんな、廊下の真ん中で!?

ちょっと…周りに人だかりが…。

場所があれだから人のいなさそうな屋上に行こう。

「ちょ、瀬戸くん、場所変えよう?」

そして私は瀬戸くんと一緒に屋上に向かった。




屋上につくと瀬戸くんはいきなり私の腕を掴んで

「なぁ、俺と付き合ってくれよ!」

と大きな声で叫んだ。

「俺は横澤じゃなきゃだめなんだよ…!!」

ぐっと瀬戸くんの手に力が入って私の腕に痛みが走る。

い、いたい。

思わず顔が歪む。

瀬戸くんの気持ちは分かったけど腕を早く離してほしい。

「離して」と言おうとして瀬戸くん顔を見た時、瀬戸くんの表情が段々豹変していくのが目に入った。

そして


「俺の彼女になるって言うまで離さないからな」

と言ってますます手に加える力が強くなった。

…瀬戸くんってこんな人だっけ?

しつこい性格でめんどくさい人だってことは前から思ってたけど、こんな暴力行為する人だったなんて…。

こんな光景を野球部に知られたらきっと野球部は活動停止になるだろう。

「い、いやだ」

必死に拒むと

「じゃあキスしろ」

瀬戸くんは耳を疑うような言葉を発した。

キスって、あの、キス…?

「な、なに言ってんの…?するわけないっ」

私がそう言うと

「じゃあ、もう無理やりでもするから」

それを言うなり瀬戸くんの顔が近づいてきた。

「瀬戸く…」

私、まだキスしたことないのに…
こんな形でファーストキスを奪われたくない。

「やっ、やだ…っ!!」

ばんっと瀬戸くんの体を思いっきり押した。

押された瀬戸くんはその場で尻もちをついた。

「てめぇ、なにすんだよ!!」

尻もちをついた瀬戸くんはいきなり私の
首元を掴んだ。

「…!」

く、苦しい…っ

瀬戸くんってこんなことする人だったの…?

今思えば、瀬戸くんのいい情報なんて
聞いたことなかった。

もっと早く気づいていればこんなことにならなかったのに…。
私はどれだけバカなのだろう。

い、息ができないよ…。

瀬戸くんの力はどんどん強くなっていく。

「せ…と…くんっ、」

もう、無理かも…っ

そう思った時。